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沈黙への抗い 

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-09-13 08:00:00

沈黙の司祭サイレンスの魔法により、島全体が異様な静寂に包まれた。

人々は口を開けているが、声が出ない。

歌おうとしても、言葉を発しようとしても、ただ無音の空気が流れるだけ。

「これは……」

ユウリが愕然とする。

自分の声すら、かすれて小さくしか出ない。

「『完全沈黙域』ね」

セリアが辛うじて声を絞り出す。

「音そのものを封じる魔法……」

サイレンスが宙に浮かび、島を見下ろしている。

「美しいでしょう?完全なる沈黙の世界」

彼だけの声が、異様にはっきりと響く。

「争いも、誤解も、すべては言葉から生まれる」

「それを消去すれば、世界は平和になります」

島民たちが必死に声を出そうとしているが、まったく音にならない。

絶望と恐怖が顔に浮かんでいる。

「言葉を奪えば、確かに争いはなくなるかもしれない」

ユウリが苦しみながら言う。

「でも、それは平和じゃない!」

「愛も、友情も、希望も、全部言葉で伝えるものなんだ!」

サイレンスが嘲笑う。

「そんなものは幻想です」

「人間の感情など、混乱の元でしかない」

彼が手を振ると、沈黙の領域がさらに広がった。

七人の声も、ついに完全に失われる。

『これは……困りました』

ティオの心の声だけが、なぜか聞こえた。

『心の声は聞こえるんですね』

エスティアの心の声も響く。

『それなら……』

マリナの心の声。

七人は互いの心の声で会話を始めた。

言葉は出せなくても、心は通じ合っている。

『みんな、手を繋ぎましょう』

セリアの心の声が提案する。

七人が手を取り合った瞬間、新たな力が覚醒した。

それは『心声連携』——声を失っても、心で繋がる魔法。

『《心韻合奏・無声詩篇》』

七人の心が一つになり、音のない歌が響き始める。

それは聴覚ではなく、魂で感じる
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